「これが出来たら100万円」
というキャッチフレーズに聞き覚えがあるだろうか。
そのフレーズは一時期ブームとなったテレビ番組で連呼されたものだ。
幼稚園の頃の私はこれが口癖になっていたのだが、もちろん語呂が良いだけでは無くそれなりの理由がある。
私の人生をねじ曲げた物、そう。
それが、「イライラ棒」である。
今回は密かにゲーム化されていたこいつをご紹介したい。
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「イライラ棒」とは
同世代はほぼ全員知っていたが、以外に年下世代に知らない人が多かったためまずはここから。
そもそもの話をすれば、大昔の人気番組に
「ウッチャンナンチャン炎のチャレンジャー」
という番組があった。
様々なチャレンジに芸能人一般人が入り乱れながら挑み、成功したら100万円というシンプルな企画ながら、そのチャレンジの面白さが受けヒット番組となった。
タイトルだけでもクスッと笑えるようなチャレンジの設定センスは秀逸だった。
例を挙げれば
・まばたきガマン列車一周できたら100万円
・スーパー肝だめし泣かずにゴール出来たら100万円
・平成のブルース・リーになれたら100万円
・流しそうめん バンジージャンプで食べられたら100万円
・6時間耐久 「命」のポーズし続けたら100万円
・10mうんてい猿に勝てたら100万円
などなど、想像するだけでも馬鹿馬鹿しいチャレンジに、テレビ局が全力で作成したセットで挑む様は素晴らしいエンターテインメントだった。
そしてその番組内で、特に人気だったシリーズが、
電流イライラ棒
だったのである。
ルールは至ってシンプル。
金属フレームで作られたコースを、棒が当たらないように突破していく。
ただそれだけである。
クリアされる毎にコースは難しくなっていき、立体的なカーブや可動式のコースなどバラエティに富んだエリアが増えていった。
Youtubeに当時の映像が残っていたので貼っておく。
https://www.youtube.com/watch?v=hiV-BM4Ge8U
最終難易度であった、電流イライラ棒リターンズだ。
このように、障害をくぐり抜ける単純なゲーム性と大がかりなセットが評判となり、イライラ棒はその後様々な展開を遂げた。
数多くのイライラ棒の展開
まずはおもちゃ。
テーブルサイズのイライラ棒がタカラトミーより発売された、それも2種類。
下のファイナルに関しては、実際に可動式になっているというこだわり。
更には、ゲームセンターにも展開された。
現代でもレンタル可能とは驚きだが、このセットにも人が殺到するほどの人気だったのである。
そして当然のように、テレビゲームへと展開することになる。
PS、64両方への展開
ゲームは別のコンシューマに2種類発売された。
どちらも実際に実況を担当した別のアナウンサーがゲーム内でも実況で盛り上げてくれる。
それぞれに違った特徴が有り、どちらも趣深い。
NINTENDO64
先に発売されたのは、NINTENDO64。
概要は以下の通り。
発売日 1997年12月19日
発売元 ハドソン
実況 辻 よしなり
こちらに搭載されたコースは6種類。
番組で登場した5コース+練習用のコースだ。
棒をスピード毎に3種類から選べる。
自分のテクニックに適した棒をチョイスすることがコツとなる。
64版の最大の特徴は、
「ミスしたら即終了」
というシビアさだ。
番組をなるべく忠実に再現しようという試みなのだろうが、これが滅茶苦茶しんどい。
例えば後半部分に苦手なエリアがあったとしよう。
そこさえ超えられれば、となったら重点的に練習したいところだが、そんなわがままは叶わない。
挑戦したくば前半を毎回クリアせねばならぬ。
しかし、「イライラ棒」というぐらいだからストレスが溜まる方が再現としては成功しているのかもしれない。
そういった意味ではハイクオリティである。
コースは基本的に曲線で作られているのだが、64では再現できなかったようで直線が連続している擬似的な曲線となっている。
そしてBGMが良い。
各ステージ毎にBGMが設定されているのだが、それぞれに個性がある。
個人的にはファイナルの重たい雰囲気なのにどこか果敢なBGMが大好きだ。
リターンズの絶望的なBGMも難易度と相まって雰囲気を出していた。
ちなみにレベルの話だが、このゲームは対戦モードがある。
そのモードではミスしても連続でプレイできるため、片方を放置して練習プレイをすることが実は可能である。
画面が小さくなってはしまうが、どうしてもクリアできない人にはお勧めの練習方法である。
ボリュームは決して多くないが、雰囲気とシビアさはピカイチ。
再現度の高さが64版のイメージである。
ただ、64を触っていた人なら分かるかもしれないが、あのスティックは固い。
細かい操作には向いていないため、その点でもストレスかもしれない。
PS版
64版の発売から約一年、今度はPSにて発売された。
概要はこちら。
発売日 1998年3月19日
発売元 ザウルス
実況 大熊英司
こちらはもう少しパーティゲーム寄りの設計となっている。
テレビで登場したコースは3種類のみ、それも完全再現とは行かない。
しかしそれ以外に様々なコースが用意されている。
その理由は、ゲームでしか有り得ないエリアが大量に登場するからである。
一例を挙げてみよう。
・上から降ってくるボルトやナットを避ける。
・メリーゴーランド、コーヒーカップ、ジェットコースターを避ける。
・機械のネズミから逃げる。
・電動のこぎりに追われる
何を言っているか分からないと思う。大丈夫、俺も分からない。
こればっかりはプレイしてみないと伝わらない。
テレビゲームならではの、現実には有り得ない様々な仕掛けには初見プレイ時に度肝を抜かれるだろう。
こんなのクリアできない!と思うかもしれない。
しかし安心して欲しい。
このゲーム、コンティニューが効くのだ。
というよりも、残機制になっており、更にコンティニュー機能が搭載されているため、相当な数ミスしても次へ進むことが出来る。
そして64版ではコーススタート時にしか選べなかった棒のスピードも、5段階で常に切り替え可能になっている。
その結果、エリア毎にスピードを変えて対処することが可能となった。
また難易度設定もすることが出来、
・棒の太さ→当たりにくさ
・残機の数
この二点が調整されるようになっている。
残機制、難易度設定。
これが、遊びやすさに直結した。
その結果、クリアするだけなら必要なのは根気。
難易度を上げればやり応えあり、ノーミスクリアが最終目標。
そんな風に、どの実力でも楽しく遊べる良システムだった。
そして特筆すべきはAIステージとエディットステージ。
AIステージは、クリアする度に掛かった時間やミス数を元に新たなステージを自動生成する。
おそらく内部的にスコアを算出し、エリア毎に難易度に応じた数字が設定されているのではないか。
そしてその総数を難易度としてエリアを組み合わせていると推定している。
これが地味なやりこみ要素のようになっていて、クリアすればするだけ難しいステージが用意されるというのは新鮮だった。
「コースを遊び尽くしてしまったら、自分で作れば良いじゃない」
と昔の人が言ったとか言わないとか。
PS版にはエディットモードも搭載されている。
エリアを自由に組み合わせることで、自分だけのコースを作れる。
というと凄く楽しそうだが、実際プレイしているとエリアは段々覚えてくる。
組み合わせというよりもエリア単体の難易度がプレイヤーにとっては大事なため、そこまで遊び込めるモードでは無い。
しかし、友達に意地悪いステージをやらせようという楽しみは残るし、自分の集中力の限界に挑戦することも出来る。
様々なモードを挙げてきたが、一番意味の分からないモードがある。
それが、「トーナメント」である。
イライラ棒でトーナメントをするのがどんな状況なのか、全く想像が付かない。
飲み会の三次会でも早々出てこない発想だ。
簡単に言えば、PSは2人までしか同時プレイできないため、それ以上の人数で戦うときはトーナメント制にしましょうという物。
名前を登録すれば自動で組み合わせを作成してくれる。
最大8人まで参加できるため、宅飲みなどでは意外と活躍するのかもしれない。
と、このように再現度よりもコースとエリアのバリエーションの充実に注力したのがPS版だ。
どちらを買うべき?
ここまで読み進めて頂いたなら、今すぐにでもプレイしたくなっているに違いない。
うずうずしながら、「どっちを買おうか?」と家族と相談している頃合いだろう。
私からのアドバイスは
「どちらも買え!」
というものだ。
もちろん昔のゲームだから今やっても当時と同じように面白いかは分からない。
大人になったのだから子供の時ほどイライラしないよ、というのも頷ける。
しかし、このゲームは馬鹿馬鹿しさと過酷さが両立された名作なのだ。
笑ってしまう仕掛け、笑えない難易度
あらゆるエリアがプレイヤーを阻止しようとするこのゲーム。
実際の番組でも太陽が回ったりロボットが出現したりと仰々しく下らないエリアが続々と登場していた。
しかしアホだな、と侮ることなかれ。
このゲームは本当にやり応えがある。
それを最後に伝えたい。
私の切ない想い出と共に。
当時の想い出
私がもっともやりこんだのは64版だ。
まだ幼稚園にも通っていない頃、ほぼ毎日プレイしていた。
当然その年齢では上手く操作することなど出来ず、同じエリアで何度も爆発。
最初は楽しいのに、途中から怒り、泣きながら。
それでもゲームを辞めることは出来なかった。
親から何度も怒られたのを今でも覚えている。
「泣くぐらいなら辞めなさい!!」
ぐうの音も出ない正論だ。
それでもひたすらプレイしていた。
それは難易度の高さを乗り越えたときの一瞬の快感と、私の元来持っている負けず嫌いな気質が噛み合った結果だろう。
PS版をプレイするようになってからも、
「なんで上からボルトが降ってくるんだよ!」
とぶち切れながら必死に全コースをクリアした記憶がある。
PSは母の実家にしか無かったため、キレる度に叔父や叔母にたしなめられていた。
傍から見たら悲しい子供だろう。
ゲームにぶち切れながら何度もプレイしているのだ。
だが、それだけ本気だったし本気にさせるクオリティのゲームだったのだ。
だからこそ、自称ゲーマーのそこのあなたも。
負けず嫌いな自覚がある君も。
イライラ棒という響きが懐かしい貴殿も。
是非入手してプレイして頂きたい。
イライラし始めたとき、このゲームは本当に始まるのだ。
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