筋トレをしていてYoutubeなどで情報を収集していると、どうしてもこの男にぶち当たります。で情報を収集していると、どうしてもこの男にぶち当たります。
日本の誇るレジェンドボディビルダー、山岸秀匡さんです。
そんな彼が、とある映画に字幕監修としてかかわったという情報が入ってきました。
映画の公開タイトルがその名も「ボディビルダー」。いやーそのまんま!
ですが内容はどうも暗いというかダークというか、いやーな気分になるという噂。
面白そうだなーと思って、一切事前情報なしで見てきました!そんな感想レビュー記事になります。
ここ最近映画はまったく追えてないので、俳優さんの名前とかは全然ついていけませんが、俺なりに映画を見て思ったことをいろいろ書き留められればと思います。
考察的な要素もなくはないですが、あくまで感想文です!それではどうぞ!ネタバレ有りなのでご注意を!
映画情報、役者について
基本情報
- 邦題:ボディビルダー
- 原題:Magazine Dreams
- 日本公開日:2025年12月19日
- 上映時間:123分
個人的には邦題よりも原題のほうが良いセンスしてるなーというか、映画を表していると見終わってから痛感しました。そこらへんは後程。
役者情報
- キリアン・マドックス役:ジョナサン・メジャース
- ジェシー役:ヘイリー・ベネット
- ピンク役:テイラー・ペイジ
- ウィリアム役:ハリソン・ペイジ
ジョナサン・メジャース(キリアン役)
本作の主人公。プロを目指す孤独なボディビルダーを演じています。とにかく圧倒的な「肉体美」と「狂気」の演技。無理やり作る笑顔の怖さが相当心に焼き付いてます。あと1日6000kcal摂取して作ったという肉体は凄まじかった。
代表作: 『クリード 過去の逆襲』(強敵デイム役)、『アントマン&ワスプ:クアントマニア』(征服者カーン役)
ヘイリー・ベネット(ジェシー役)
キリアンが密かに思いを寄せる女性。彼女の持つ柔らかい雰囲気が、ピリついた物語の中で一筋の光になっています。何故か親近感の湧くルックスと、キリアンにドン引きする顔が好き。
代表作: 『マグニフィセント・セブン』(未亡人カレン役)、『シラノ』(ヒロイン・ロクサーヌ役)
テイラー・ペイジ(ピンク役)
立ちんぼというか娼婦。なにもうまくいかないキリアンに対してほんの少し見せる同情が刺さりました。
代表作: 『ゾラ』(主演ゾラ役)、『ビバリーヒルズ・コップ: アクセル・フォーリー』
ハリソン・ペイジ(ウィリアム役)
キリアンの祖父役。ベテランならではの安定感で、不器用な孫(キリアン)との切ない関係性を見事に表現しています。祖父は救い。
代表作: 『ライオンハート』(ジョシュア役)、ドラマ『犯罪捜査官ネイビーファイル』
マイケル・ビーチ(ブラッド役)
キリアンがファンレターを送り続け、神のごとく崇めるボディビル界のレジェンド。 彼が登場するだけで画面の空気が変わるほどの圧倒的な「成功者のオーラ」を放っています。演じるマイケル・ビーチ自身、元ボディメイク(フィジーク系)の選手という経歴を持つだけあって、その筋肉の密度と説得力は本物。 単にデカいだけでなく、長年鍛え込んできた者にしか出せない「競技者の佇まい」が、孤独に足掻くキリアンとの対比をより残酷に際立たせていました。
見終わって思う、原題の良さ
この映画の主軸にあったのはボディビルという競技です。それは間違いない。そのうえで、原題につけられている「Magazine Dreams」という原題が非常にいいというか、本当に映画を象徴しているのはこっちだったなーという気持ち。
生きるのが下手、かつ境遇も地獄なキリアン
キリアンはもうとにかく見ててつらい。それを後押しするような画面全体の暗さもまた悪い雰囲気です、いい意味で。
AHDHっぽいというか、相手との距離感が上手く掴めなかったりトークが苦手です。それでもデートの時はうまいこと喋れたりもするのですが、かなり頑張らないと綺麗な会話が難しい。
だからこそ、車の中という「自分しかいない聖域」で攻撃的な音楽を大音量で流す演出が、痛いほど刺さります。あの演出は単に音楽を流しているのではなく、「自分だけの世界」から「他者のいる外界」へ踏み出す瞬間に、あえて無音になる。 その静寂こそが、彼が外の世界と接する時に感じるハードルの高さや、覚悟を決めなければならないほどの断絶を表していたように思います。
怒りを言葉で表現することが出来ず、ちょっとでも制御を外れてしまうと暴力や破壊に走ってしまう。
ほんで境遇としても両親が居ない、父が母を殺したうえで自殺するという壮絶な過去。
これに加えて、ファストフード店で暴れるシーンのセリフに「ニガ」だったり人種への言及があることを考えると、黒人差別も食らってきたのではないかと推測されます。と思って探したらインタビューでも黒人の歴史はテーマの一つであると言及されていました(参照:https://www.ebony.com/magazine-dreams-jonathan-majors-elijah-bynum-discuss/)
そんなにっちもさっちもいかない状況でも、唯一の支えとなっていたのは退役軍人の祖父。だからこそ祖父が絡んだ事情(映画で言えば塗装屋とのトラブル)になるとなおさら制御が効かない、と。
デートも途中まではいい感じだったのに、ボディビルの話題になった瞬間にジェシーを置き去りにしてひたすら語る、語る、語る。そりゃジェシーも逃げ出しちゃうぜってぐらいに語る。あとやたら上から目線。
人を見下したい、というどす黒い性根
キリアンは基本的に人を見下してます、たぶんですけど。もちろん先のインタビューを踏まえれば黒人として虐げられてきた様々な過去があるとは思います、ただそれとは別になにかキリアンの本性にそれを感じるんですよね。
それこそデートでボディビルダーの名前を知らない、と言っただけのジェシーに「外にもっと出たほうがいい」なんてへんてこな説教をしてみたり。
ペンキ屋との電話でも「丁寧にお願いしているのだから聞けよ」という上から目線を感じたり。もっとさかのぼれば冒頭での看護師トラブルでも、暴力的な振る舞いをした自覚がないと話してました、それぐらい強迫的に人を見下そうとする何かを感じます。
おじいちゃん以外で唯一リスペクトの対象だったブラッドへのファンレターも、リスペクトしている雰囲気を持たせつつ基本的には図々しい連絡です。勝手に友達と思っているような、返事が来て当たり前と思っているような・・・結果利用され、体を弄ばれるという悲しい結末になってしまうのですが、文面を見るとやむなしというか君も悪いところあるぜ、という気持ちになっちゃう。
実際、クラブでヤクを決めるおっさんとの会話でもそういう面をズバッと言われています。キリアンに向けて言ったセリフではないので偶然なんですが、結果キリアンも刺されている。その会話の果てに彼は殺害計画を立ててしまうという流れでしたね。
そんな彼が、なぜボディビルという職業を選んだのかなーと途中から考えながら見てたんですよね。
なぜボディビルだったのか
で、最初にぶっちゃけたことを言うとボディビルじゃなくても良かったのかもしれないな、と思ったりしました。
キリアンの行動原理を支えるのは、「名を残す」という点が非常に強い。その具体的な計画として、ボディビルの大会に勝って雑誌の表紙を飾るんだ、という点にとにかく執着しています。
この自己顕示欲というか、有名になりたい、後半になるとより言及される「死後に覚えられていたい」という欲求が彼の超根底にあります、なのでボディビルはある意味手段だったのではないか、という考察、というか推測です。
もちろん彼が筋肉大好きなのは間違いありません。ただそこへの言及や行動は決して多くなく、ほぼ唯一クラスで感じられたのはスター選手であるブラッドの腹筋に触れる時。
っていう事実を踏まえて、なんでボディビルだったのか。これは俺も結構ちゃんと筋トレをしているからわかるのですが、たぶん他者の介入が極端に少ないからだと思うんですよね。少なくとも鍛える過程において。
人によって打ち込むものって様々あるんですが、例えば仕事だったりスポーツでもいろいろあったり音楽だったり。
その中でキリアンが選択したボディビルというのは、ステージに上がるまでは一人で黙々とトレーニングをし続けるものです。ただ、そんなキリアンとの対比として二人で励ましあいながら筋トレに励む人が同じジム内にいたシーンが入っているのも結構残酷。
そんなキリアンが競技人生において関わる数少ない人間が、審査員と憧れであるブラッド。ただここもかかわり方が問題まみれで、やっぱり人間関係が非常に不器用、かつ悪いところも多いというね・・・
彼はとにかく名前を残す、覚えてもらう、ほんで人の上に立ちたかった。
となると雑誌の表紙になれて、かつ見てもらうだけで凄さが伝わる筋肉という筋肉の特性にひかれたのかもしれません。ただボディビルへの愛がないため、ボディビルで勝つということよりも名前を残すということだけに囚われた結果、犯罪計画を立ててしまうのですが。
最後に踏みとどまったのは筋肉への憧れと愛された記憶
何度か書いちゃってますが、キリアンは全てを終わらせるためというか、ほかの解決策が何も浮かばず、復讐と名を残すことに取りつかれ、殺害計画を立てます。
ブラッドを殺すこと、過去の審査員は殺す気だったのか最初から脅すだけだったのかはわかりません。
ただし結果として、二人とも殺すことなく家に帰ります。
審査員に関してはぶっちゃけよくわかりません。彼にすらキリアンは覚えられておらず、彼に対して評価されること、選手としてボディビルをすることの辛さ(笑顔を作るあたり)を思い知らせ、生殺与奪を握ることで満足したのか、何も浮かばれず辞めたのか、どっちなんでしょうね。
で、ブラッドを殺すのはあとほんの僅か一歩だったと思います。
ただそこでフラッシュバックしたのは、祖父との記憶、そして両親が良好な関係だった頃の記憶。
そう思うと、彼は愛に飢えていたのかもしれません。そして帰ってきて泣き崩れるキリアンを、祖父はいつもと変わらず受け止めます。
祖父はとてもやさしい、常に勝ってなくても自慢の息子だと伝え、負けても立ち上がるのが誇りだと言い聞かせていました。人のせいにせず自力で戦うのも素晴らしいと。
自慢の孫になってくるよ、と家を出るキリアンに対して「今でも自慢の孫だよ」と返す祖父の優しいことよ(´;ω;`)
ここの感覚が、たぶんキリアンにはずっとなかったんですよね。言葉としては受け取っていても、あくまで勝たなければ、名前を残せなければ意味がないと思い続けていた。
でも最後の最後に、その祖父のメッセージはなんとか伝わりました。ラストの独白ではどう記憶されるか、と話している。
祖父がずっと伝えていた、戦う姿勢や生き方にも価値があるんだ、それを見てくれている人がいるんだというところですね。
ただ俺は、ブラッドのポージングを間近で見てなにか感じるものがあったんじゃないかな、とも思っています。これは一切描写されていないので、俺の願望かもしれません。でも、ほんの少しでもボディビルを愛する、筋肉への憧れがキリアンの中にあってほしいな、なんて思っちゃうんですよね。
何一つ救いが無いように見えるラストに想いを馳せて
ラスト、一応前向きになったキリアンですが、何一つ解決はしていません。
人を見下す癖はなかなか無くならないだろうし、仕事だって大変。今は祖父が見てくれているから頑張れますが、努力の過程を知ってくれる人がこの先現れるのか、祖父が亡くなったらどうなってしまうのか。
何一つ解決はしていない、それでもキリアンの内面は立ち直りました。
これから先、今まで降りかかってきたような困難は変わらず彼を襲うし、それを跳ね返せるほどの希望は見えていない。
だからこそこのラストはよかったんじゃないかな、と思います。
ほかの人の感想を見てみると中途半端だとか、カタルシスがないとか酷評している人もいるんですが、私は好きです。
人生はそんなに大きく変動しないし、それでも地道に戦うことを彼は選んだ、だからごくわずかな希望と、祖父の愛を胸に生きていくしかない。
ブラッドへの執着も一区切りつけ、より健全な形で筋トレと、ボディビルと向き合えたらいいなと想いを馳せるしかない。自分の写真を飾っていることからも、自己肯定感が芽生えたのではなかろうかと。小さいけど、すんごく大事なことなんですよね。
そんな綺麗とは言い難い後味だからこそ、観てよかったと思える映画でした。エンタメ要素は全然ないけどね!でもそれも映画ですよ!
総評!人を選ぶが個人的には大満足!
総評としては、人を選ぶとは思います。スカッとするシーンが何一つない、ずーっとキリアンの生きにくさと彼の抱える問題、周囲由来も本人由来も全部見届けるという内容です。
だからこそ、最後の小さな小さな救いが大切なんじゃないかと思えた気もします。
かなりビター、すっきりしない、でも観て良かった!と心から言える映画でした。みんな見てね!!!!

