アルバム紹介 キャプテンストライダム「108DREAMS」なぜ売れなかった?

 

 

突然だが皆さんは、

キャプテンストライダム

を知っているだろうか。

そう。刃牙シリーズに出てくる彼だ。

 


(板垣恵介ⓒ)

 

しかし今日紹介したいのは彼ではない。

彼の名を冠した名バンド

「キャプテンストライダム」

彼らのリリースから、筆者が愛してやまないアルバムを紹介したい。

それが、「108DREAMS」である。

 

 

 

 

今日はこのアルバムを通して、彼らの魅力をご紹介したい。

ほんっとにいいアルバムなんだ。ほんじゃ、いっくぞー!

 

 

 

 

バンドプロフィール

 

 

キャプテンストライダムは、日本のスリーピース・ロックバンド。メンバー全員が宇都宮大学の出身。

2010年2月3日、ベストアルバムの発売をもって活動休止することを発表。

永友聖也(ボーカル、ギター)
梅田啓介(ベース)
菊住守代司(ドラム)

—-Wikipedia

 

代表曲にNARUTOで採用された「マウンテン・ア・ゴーゴー・ツー」銀魂で採用された「風船ガム」などがある。

ポップなサウンドを特徴とするバンドである。

 

幅の広さ、全体の調和

 

このアルバムは彼らにとって二枚目のアルバムとなる。

タイトルには、

煩悩を否定せずに、前に進む力に変えていけばいいってメッセージでもあるんです(永友)

という意味合いが込められている。

 

一曲目「サイボーグ」のイントロのリズム隊が漂わせる不穏な雰囲気。
そこからのジャギッジャギのギターサウンドに心を奪われるところからこのアルバムは幕を開ける。

とにかくこのアルバムの特徴は幅が広いこと。

 

ダンサブルなディスコ風ナンバーあり(キミトベ)

色気たっぷりのフォークチックなバラードあり(十五夜)

農民テーマの茶目っ気ハードロックあり(GOOD HARVEST)

そして振れ幅大きく聴き手を揺さぶりながら、
キラキラとした切なさを纏う2曲(流星オールナイト・悲しみのシミかな)でアルバムを締めくくるのがまた憎い。

今回、あえて一曲ずつの感想は書かないという選択をした。

それはアルバムを通して聴くことで前後の曲との幅に驚かされたこと、その驚きをもたらしながら調和を崩さないバランスが保たれている印象がとても強いからだ。
もちろん曲単体でも良さはたくさんある。しかし筆者としてはアルバム自体の作品としての完成度をお伝えしたいのだ。

曲順としてもこれ以上の並びはなく、上りどころ落としどころ、胸倉つかまれどころで全て彼らの意のままに踊らされる感覚を是非味わっていただきたい。

 

ポップであること

 

本作のポップさという点に関して

「ポップである」という一点で突き抜ける事にチャレンジしたアルバムで、
「常にポップでありたい」というキャプテンストライダムの決意表明でもあります

—-公式ブログより

と発言している。

それは曲の特徴やスタイルが幅が広いながらも一貫されているテーマであり、それが凝縮されているのがこのアルバムだと筆者は捉えている。
フレーズとメロディーのキャッチ―さを生み出す永友のセンスは言わずもがな、それをポップ全開でありながらロックとして聴かせる演奏技術が憎らしい。

決して出過ぎず、しかしどこか色気を帯びたうねる梅田のベースライン。

彼らの音楽の根底にどっしりと存在するのは純度の極めて高い「グルーヴ」
バンドとしての生命力を感じさせるグルーヴを支える菊住のドラミング。

これらが合わさることで、ポップでありながら骨太なロックと表現される楽曲を生み出すことが出来たのではないだろうか。

 

ポップ曲の代表、「マウンテン・ア・ゴーゴー・ツー」

 

そんなポップな曲の中で、トップクラスに知名度が高いのがこの曲、

「マウンテン・ア・ゴーゴー・ツー」だと思う。

この曲はNARUTOのEDテーマに採用されたことで有名になった。

歌詞がとにかくポップ、曲調はダンサブルながらロックの気配あり、耳に残るフレーズのセンスありと素晴らしい楽曲だ。

 

豆知識だが、この「マウンテン・ア・ゴーゴー・ツー」は元々「マウンテン・ア・ゴーゴー」という曲があり歌詞だけ書き換えた為ツーになったという経緯がある。初代はもっとポップで遊びに溢れた歌詞なので、こちらもぜひ聴いて欲しい。

 

 

そしてもう一つ。

彼らのポップさを考えるときに間違いなくウエイトを占めるのが、「歌詞」である。

 

リズムに乗る続ける歌詞、情景を音へ映し出す才

 

今作の歌詞はとても心、というより脳裏に焼き付く歌詞が多い。
それはインパクトだけではなく、

・曲のリズムに乗り
・洒落っ気を持って韻を踏む

という土台に裏打ちされている。

例えば1曲目の「サイボーグ」では

人工のキスを交わす オレとアナタはサイボーグ
デリケートなパーツどうし つなぎ合わす家財道具

作詞:永友聖也 久保田洋司

という歌詞がある。

 

「サイボーグ」と「家財道具」
このような語尾のアクセントやリズムを重ねるのは英語圏の楽曲によく見られる。
一音一音が発音となる日本語において、この韻をリズムと共に踏み倒すセンスは驚愕である。

そしてこのアルバム、サウンドと歌詞が明確に情景を想起させる。

「バースデー」では決してテンポが速い訳ではないが、バスに乗って走りゆく疾走感が表現されているし、

「悲しみのシミかな」では泣きたくなるほど青い空、その純粋さとどこか空虚な空間がCメロで胸にたたきつけられる。

 

このアルバムについては、
どの楽曲にも主人公がいて、彼が闊歩するようなアルバム
と永友は評した。
その主人公が発見された曲、それは2曲目の「キミトベ」であった。

 

柱となる「キミトベ」は希望だ

 

「キミトベ」は、本作の4か月前にリリースされたシングル。
永友がツアー中に

一夜限りの観客との逢瀬から
「今夜、ここで、君とじゃないと意味がないのだ!」
という気持ち

になり、盛り上がる曲にすべく80’sディスコの曲調で作り上げた一曲。
ポップと骨太さを両立する、まさしくアルバムの象徴的なナンバーである。

 

そしてこの歌詞の中の男。

彼は
仮面だらけの町で一人だけ素顔で、
みんなが躍る中一人だけ踊らず、
斜面だらけの中一人だけまっすぐ立っている。

 

彼の行動、それがキャプテンストライダムの意思表示。
自分たちのやりたい音楽を貫くという明確な主張だ。

「キミトベ」においてまっすぐ立ち続けた彼。
彼があらゆる楽曲を通して闊歩する。
それが、このアルバムの背景である。
この設計は永友本人が明言しており、この曲が一種の突破口だったとも話している。

その闊歩する姿は明確に主張する。

キャプテンストライダムここにありと。

その背中にはアルバム名に込められた希望、夢が確かにある。
それはキャプテンストライダムの希望であり、メッセージでもある。

「108DREAMS」は、彼らの存在を声高々に叫んだ珠玉の一枚だ。
魂のこもったこのアルバム、是非聴いてみていただきたい。

 

 

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