7月6日、田村ゆかりさんのライブに行ってきた。
4年ぶりに開催された全国ツアー、
「Twilight▽
この4年間、様々な形態でのライブ・イベントが行われていたが私は多忙で参加できず、参加するのはまさしく4年ぶりであった。
その間に私の感受性も変化したし、田村ゆかりさんの表現も大きく変わっている。
岩手公演はツアーの後半での開催だったが私はセットリストの情報を一切遮断し参加した。
もう号泣してしまうほどに凄まじいライブだったのだが・・・
それとは別に今回は久しぶりのツアーであり、いろんなことが大きく変わったツアーでもあった。
ということで、ライブ事態への言及は千秋楽まで控え、過去のインタビューから発言を精査し、今ツアーの立ち位置を自分なりに整理してみようと思う。
長文、引用多用です。覚悟してね。
よっしゃ、いっくぞー。
音楽活動の休止と事務所の移籍
声優事務所、アーティスト事務所の移籍
前回、田村ゆかりがライブツアーを敢行したのは2015年。
年数にして4年ぶりとなる。
その間に、所属レーベルと事務所の移籍が行われた。
声優、CDレーベル共に移籍したのが2016年。
正確に言えば、声優としての所属事務所を移籍。
そこから新レーベルの立ち上げまでは空白期間が空いている。
このタイムラグについては後述するが、これ以降しばらくはラジオ、音楽活動共に鳴りを潜めることになる。
特に音楽作品は、
2015年4月1日リリースの
「好きだって言えなくて」
以降空白があり、約2年半後にミニアルバムのリリースとなっている。
この時期に関して、
今にして思えばですけど、心を休める時期だったのかも。
音楽とラジオをやらないと、自分のことを外に発信しなくてよかったので、やっぱりすごく気持ちがラクで。──毎週ラジオをやるのが当たり前の生活だと、常に自分を切り売りするような感覚に陥りそうですよね。
そうなんです。私は基本、自分のことを話したりするのが好きではないので。
声優としてお芝居だけやればいい、という生活が本当にラクで、このまま音楽からはふわっとフェードアウトしてもいいのかなって(笑)。
そういう気持ちは本当に強くありました。
と述べている。
この発言から分かる通り、決して表現したいという欲が常にあるわけではなく、まさしく休養期間となっていたようである。
それでも新レーベルを立ち上げ、活動を再開した経緯について
後押しと言うより半ば強制的だったんですけど(笑)、
「ライブの会場を押さえちゃいますよ?」と言われて……
本当にギリギリまで引っ張ったんですが結果ライブをやることになったので、じゃあ曲を作らないと、と思ってミニアルバムを出したんです。
と発言している。
音楽活動を周りに背中を押される形で再開した田村ゆかり。
本人の意思、モチベーションは本人のみぞ知るとしか言えない。
移籍は本人の希望だった
一つ、興味深い事実として、
キングレコードとの専属契約終了は本人の意向
というものがある。
これは終了時にファンクラブ運営が公式に出したコメントであり、同時に声優事務所のアイムエンタープライズ、所属レーベルのキングレコードが合名で発表していることから、信憑性が高いものと考えている。
何があったのか、筆者の立場から探ることは根拠のない憶測になるため無為である。
ただ、この事務所移籍。
声優とアーティストの両事務所でタイムラグが発生している。
2016年
3/20 キングレコードとの契約終了(アーティスト)
8/1 声優事務所を移籍
2017年
6/25 新レーベルを発表(アーティスト再開)
ここで新曲、並びにライブが発表された。
アーティスト事務所の空白期間は1年3か月。
これを鑑みるに、おそらくキングレコードの方針と田村ゆかりの意向がどこかですれ違い始めたのではないかという推測が成り立つ。
その結果として、しばらくの休養期間が出来たのではないかと。
そしてライブ決定後、そこへ向けてCDが製作されるようになる。
こうして行われたライブが
「20th Anniversary 田村ゆかり LOVE ♥ LIVE 2017 *Crescendo ♥ Carol*」
だったのだ。
このライブは先に決定され、使用曲を増やすためにミニアルバムが製作されたと考えられる。
また、翌年には2月下旬に3daysのライブも開催されている。
この時期のリリースに関して、「恋は天使のチャイムから」のインタビューで
前回のミニアルバムと同様、「ライブで歌える曲を増やそう」というところで作った曲なんです。
本来は「曲が溜まったからライブをやる」という流れが理想的なので、あまりよろしくない状態で進んではいるのですが(笑)。—-エンタメステーション、「恋は天使のチャイムから」インタビューより
つまり新事務所以降の田村ゆかりは、
「ライブのために曲を書く」
というスタンスが少なからず存在している。
それは状況が故の部分でもあり、スクランブルでもある。
これは今回のツアー、そしてその直前にリリースされたミニアルバムに触れるうえで、避けては通れない観点だ。
直前に発売された[Strawberry Candle]
ライブ前のリリースが背負う使命
このツアーの直前、一枚のミニアルバムが発売された。
それが、「Strawberry Candle」である。
Strawberry candle (CD+DVD) [ 田村ゆかり ] 価格:2,262円 |
このアルバムについてもいくつかインタビューがあり、意図を紐解くカギがある。
アルバムのコンセプトの一つとして、
田村 ん~、でも8曲だとアルバム作りは難しいですね。
言ってしまえば、ライブのことを考えているので確実にライブでやる8曲となると、どうしてもかわいい感じの曲ばかりになるんですよ。
で、最後のほうにまずいと思ってちょっと暗めの曲を3曲足したんです。
やっぱり、8曲だとバランスが難しいですね。──なるほど、8枚あるカードのなかですでにアッパーなものから切ってしまうと、残りの選択肢が少なくなってしまう。
田村 そうなんですよ。なかなか難しいなって。
そういう意味でも、本当に盛り上がりを意識したアルバムになっちゃって。
あるいは別の媒体でも
──今作はどういったコンセプトで制作されたのでしょうか?
田村: コンセプトは私の中ではあったりするんですが、秘密です▽ ただ、ライブをやることが決まってからのリリースなので、ライブでできるよう、ちょっとアッパー系の曲を多めに作ったりしています。あとはライブのコンセプトが決まっているので、そこにちょっと寄せようとしたところはあって。なので、夜とか星とかそういうものは、意図的にちょっと多く入れたりはしてます。
と語っていることから、内容のコンセプトとは別にライブを念頭に置いた製作がなされたことがうかがえる。
ただ本人は以前から公言されているためファンならご存知かもしれないが
「元気な曲よりもミディアムやバラードのほうが好きなところは、一貫して変わっていませんね。」
という主旨の発言を何度かしている。
つまり、いわゆる「飛び曲」と呼ばれるものは計算されて発表する、需要に対応した楽曲だと言うことができる。
誤解しないでいただきたいのは、好きでもなく歌ってるわけではないという点。
これは後述するので今は置いておく。
簡潔に言えば
・ライブのためにアップテンポの曲を作り
・好きな曲も入れてはいるが
・曲数含め、バラードは構想に無し
というアルバムだといえるだろう。
「育てる曲」は計算されている
この育てる曲、という単語は田村ゆかり自身が発した言葉にある。
田村 (略)ライブを意識して、新しい盛り上がる曲をと思って作っているので、そこは盛り上がるといいなと。
──やっぱり新曲がいちばんいいところで盛り上がってほしいですからね。
田村 今回はツアーなので、みんなで育てていけるといいなと思います。
育てる、という言葉が多少わかりにくいかもしれない。
要はコールが新しい曲に対して作られ、安定していくことに近い。
この曲は盛り上がる曲だ、と認知されることでより盛り上がりを増す。
そして育てる、という単語には観客もステージの一部だという気持ちがにじみ出ている。
実際のライブのメンバー紹介で必ず
「ゆかり王国ー、オーディエンスのみんな~~」
と発言しているのは、その象徴といえるかもしれない。
盛り上がる曲では存分に盛り上がってほしい、それもまた田村ゆかりの切なる願いなのだ。
歌いたい曲、盛り上げたい曲
ここまでの本人の発言に基づいた情報をまとめると
・歌いたい曲はミディアム、バラード
・しかし盛り上がる曲は盛り上がってほしい
ということになる。
一見矛盾しているように思えるこの二項。
しかしライブでファンからのコールを聞く田村ゆかりはとても楽しそうに見える。
歌うことの楽しさ、ファンとともに盛り上がることの楽しさは別物であり、両立するものだと筆者は考えている。
それは田村ゆかりという人間のサービス精神とパーソナリティが起こした小さな奇跡だ。
自分を表現すること。
ファンの期待に応え、共にライブを楽しむこと。
自己表現の手段でありながら、軽々と第四の壁を超える。それが田村ゆかりの凄さの一つといえるだろう。
第四の壁は、想像上の透明な壁であり、フィクションである演劇内の世界と観客のいる現実世界との境界を表す概念である。
—-Wikipedia
イメージ上の田村ゆかり
田村ゆかりは時折、周囲の持つイメージに関して言及する。
それは事務所の移籍以前から何度も行われている。
それは今作でも例外ではない。
象徴的なのは「セルフィッシュ」という曲だ。
この曲は飛び曲ではなく、ミドルテンポの曲だ。
この曲に関して確認できたコメントは二つ。
田村 RAMさんには「とにかくかわいらしいのでお願いします」と発注しました。そんなノリづらい曲ではないですからね、ライブで盛り上がってほしいですね。
この曲は私の”パブリック的なイメージ”で書いて下さったようで、みんなのイメージする、”田村ゆかり”っぽいですね。
つまり、とにかくかわいい田村ゆかりというのは一つの象徴ということになる。
田村ゆかりの象徴は大きく分けて二つ。
①いわゆる飛び曲と呼ばれるアップテンポ、アニメソング然とした曲。
②多少わがまま、恋愛に夢中な女の子ソング
という傾向に取ることができるだろう。
事実、このイメージ上の田村ゆかりという存在には以前から何度も本人が言及している。
パブリックイメージに応える、というのは田村ゆかりの一つの才能であり、貴重なものだ。
しかし周囲の期待のみで動くとき、人は壊れてしまう。
そんな中、自分のやりたいことをどう打ち出すのか。
その答えの一つが、新レーベルの設立だったのかもしれない。
今ツアーで答えは出るのか
ここまで見たように、決して自発的というのは難しい状況の中で再開された音楽活動。
しかし4年ぶりの全国ツアー開催までついに漕ぎつけた。
ここまで文章を書いておいて、一つだけ意図的に抜いた項目がある。
「田村ゆかりが表現したいもの」
具体的にはどんな曲が好みで歌いたいのか。
どんな意図を込めているのか、そこには言及していない。
理由は単純に、まだ見えていないからだ。
今ツアーは、再出発に近い。
新レーベルの立ち上げ、ファンクラブ管理会社の変更。
ツアーのために仕上げた曲たち。
徐々に状況が整った中で行われた全国ツアー。
ツアー向けのCDではありながら、当然自分の歌いたい曲も入れている。
ツアー内での曲目のバランス、演出含め自分のフィールドで勝負することができる。
新レーベル・ファンクラブの管理会社含めた総力戦、表現に挑戦するツアーともいえるのだ。
このツアーで田村ゆかりに答えは見つかるのか。
そしてその姿にファンは何を思うのか。
全ての公演が終わった後、それは明らかになるだろう。
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