想い出ゲームレビュー「バイトヘル2000」

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色んなゲームを今までやってきた。

本数としてはたいした物ではなくても、世間的にはゲーマーと呼ばれるような人種に当たる人生を送ってきた筆者。

 

その中で、ゲームの中にミニゲームが収録されていたゲームは数知れない。

どうぶつの森のファミコン、ドラクエやポケモンのスロット、龍が如くのカラオケ・・・

 

 

しかし、ミニゲームだけで構成されたゲームというのはそうそう無い。

 

今日はそんな奇妙な作品をご紹介したい。

 

ミニゲームのためにミニゲームをする。

そんな賽の河原のようなゲームだ。

このゲームのタイトルにも地獄という言葉が含まれている。

 

中毒性に溢れるこの作品、一度触れてみて頂きたい。

 

 

 

 

 

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「バイトヘル2000」概要

 

 

発売日 2005年12月22日
発売元 ソニー
プラットフォーム PSP

 

 

 

 

 

 

 

なんと制作にあの「電気グルーヴ」が参加しているといういわくつき。

※正確にはピエール瀧が参加している。

 

これには実は、ゲームの制作背景が関わっている。

 

 

 

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前身と言えるゲーム「グルーヴ地獄V」

 

 

 

そもそも電気グルーヴは、1998年にゲームの制作に参加している。

それが、このバイトヘル2000の前身とも言える、「グルーヴ地獄V」というゲームだ。

こちらに関しては、筆者はプレイ経験が無いため調べた情報のまとめとなるが

 

・「バイトジゴク」へ出向き、バイトをこなすことで報酬を得る。

・得た報酬を元にガチャガチャを回し、音源を収集する(ハズレ、被りあり)

・音源を元に、自宅で簡単な編集をしてテクノミュージックを作ることが出来る。

 

という内容の物。

タイトルはグルーヴ地獄Vとなっているが、1~4作目などなくいきなりVである。

 

またこの頃からシュールな世界観を持っていて

「とあるバイトを頑張っていたら社員にならないかとオファーされた。はい、と答えたらゲームオーバーになった」

「ゲーム内の人物に、このゲームのディクスを投げたらよく飛ぶと言われた」

など、全く理解できない状況が起こる。

 

電気グルーヴをアーティストとしてご存じの方なら違和感は無いかもしれない。

傍から見たら全く理解できないような言葉の並びなのに聴くと格好いい、そんな彼らの音楽性をゲーム内で表現したらこんな形になるのか、それとも筆者の考えすぎか。

ともかく、ピエール瀧自身が「クソゲー」と語り、世間では奇々怪々として見られたこのゲームは、後世に影響を与えたとかそんなこと無いとか。

 

 

 

そしてこのソフトの発売から7年。

満を持してこのバイトヘル2000は発売された。

 

 

 

 

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タイトルがゲームの全て

 

 

 

このゲーム、改めてタイトルを見てみよう。

 

「バイトヘル2000」

 

そう、このゲームはバイト地獄なのだ。

グルーヴ地獄Vでバイトを斡旋してもらう場所がバイトジゴクだったということももちろんタイトルに掛かっているのは言わずもがな。

今作はそのバイト部分をゲームの根幹に置いた、というかバイトがほぼ全てのゲームだ。

 

 

ゲーム内で出来ることはそう多くない。

 

まず、最初から斡旋してもらえる4つのバイトをこなす。

働き具合により、報酬を受け取れる。ちなみに単位は日本円だ。

 

そして稼いだお金を元に、ガチャガチャを回す。

ガチャガチャから出てくるのは

「ハズレ」
「ドウグ」

そして「バイト」だ。

 

上記二つはおまけ要素。

 

つまりこのゲームは

「バイトして稼いで新たなバイトを見つける」

という終わらない連鎖の中を彷徨うものとなる。

まさしく賽の河原であり、無間地獄だ。

 

 

 

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あまりにも個性の強いバイトたち

 

 

そして一つ一つのバイトが、個性を声高々に主張してくる。

それぞれが練りに練られたクソゲーと呼べる物ばかり。

 

ただただボールペンにキャップをはめるだけの「ボールペン工場」

オス、メス、死体の3種にひよこを分類する「ひよこ鑑定士」

ファミコン並みのクソ画質でミスするまでノックを受け続ける「地獄!千本ノック」

3カウントギリギリでフォールを返すことを目指す「人気プロレスラー」

リアル時間で数時間以上待機、スリープ機能が効かない「地引き網」

ロゴ丸パクリ。ただただ拾うだけ、疲労するだけ「みんなのGOLF場ボール拾い」

酩酊状態でフラフラ、テープカットを成功させよう「酔いどれ市長」

 

 

など、ここに挙げたのはあくまでも一例である。

 

 

タイトルと簡単に説明だけでは全くゲーム性が想像が付かないような物ばかり。

 

そんなミニゲーム、すなわちバイトが本作には通信専用含めて総勢40種類も用意されている。

正直、正気の沙汰ではない。

 

それもただアイディア勝負だけの40種類かき集めではない。

それぞれが、きちんとこだわって作られた物なのだからなおさら意味が分からない。

 

 

 

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独立した雰囲気を持つバイト達

 

 

 

バイト毎に世界観も違えばイラストの画風、BGMに至るまで全て個性がある。

 

特に筆者の思い入れが強いバイトを挙げていきたい。

 

 

スラ仏百人組手

 

 

「スラ仏百人組手」というバイトがある。

スライムではない、スラ仏だ。

 

ゲーム性はRPGのターン制戦闘を100体繰り返すだけ。

だがこれがどうして、レベルデザインがよく出来ている。

 

登場するのはどれも仏。

一見して仏とは思えないものも登場するが、仏である。

アントニオ猪木に似ている敵も出てくるが仏なのだ。

 

そして一つ倒す毎に経験値、アイテムドロップがある。

装備品をもらえることもあれば、回復アイテムや攻撃魔法など様々だ。

段々と強くなっていく仏を、アイテムと戦術、それに運を味方に付けて倒していかなくてはいけない。

 

HPが0になった時点で即終了だから出し惜しみは出来ない。

しかし無計画にリソースを注ぎ込んでしまえば、いずれは不足し倒されてしまう。

全く気が抜けない戦闘が百体続く上に、仏の強さの上昇は無理ゲー感が全くない。

BGMもどこかで聴いたことがあるような、それでいてイラッとしないギリギリのラインで鳴り続ける。

 

筆者は最後まで百体全て倒すことが出来なかったが、絶対無理だと投げたことは一度も無い。

まさしく計算されたレベルデザインだったのだろう。

 

 

ファミレスオーダー取り

 

 

ファミレスで注文を受ける、それだけのゲーム。

と説明してしまえば簡単だ。

 

このゲーム、PSPを縦に持つ必要がある。

なぜか。

実際に注文を受ける際に使うハンディ端末を再現するためだ。

 

メニューのジャンル毎にページが分けられているが、客が順番通りに注文してくれるとは限らない。

「コーヒーの人は手を挙げて!」というように客を見なくてはいけないシーンもあるため、ハンディだけに集中するわけにも行かない。

「さっきのキャンセルで」と言われても、誰が何を頼んだか把握していないと取り消すことも出来ない。

絶妙に、実際のバイトにあり得るストレスを細かく再現してくる。

 

更にこのバイト、PSPの本体時計と連動している。

深夜とお昼時では、客層もグループの人数も変わってくる。

そんなところ誰が気にする、という点までこだわったこのバイトは、筆者にファミレスのバイトは絶対現実でやらないという固い決心を持たせた思い出深いバイトの一つだ。

 

 

じゃんけん世界大会

 

 

タイトルからして反則なのである。

小学生男子が言い出しそうな思いつきを本気でゲームにするでない。

 

本大会は、ゲームであるから当然ながら参加者も限られている。

つまり、何度も出場すれば同じ相手と何度も出会うのだ。

 

そして各キャラには、出す手の傾向があり、ゲーム側で記録してくれる。

出場すればするだけ対戦相手のデータが溜まる、じゃんけんも情報戦の時代だ。

 

じゃあ数を重ねれば楽勝じゃ無いか、という訳でもない。

 

例えばだが、パーが90%、グーが10%という相手が居る。

普通に考えたらチョキを出せば勝てるのだが、10回に1回は負けてしまうのだ。

かといって何回もあいこになるのを覚悟でパーを出し続けてしまっては、効率がガクンと下がってしまう。

 

この大会で優勝するには本当に運も身につけなければいけないのだ。

 

またそれぞれのキャラにもちょっとしたプロフィールが設定されており、そちらも必見である。

あと個人的な好みとして、じゃんけんのかけ声が安っぽいのに大会の雰囲気を醸し出すリアルさを持っている点だ。

これが序盤は気にも留まらないが、勝ち残って好成績が見えてきた瞬間にリアルな歓声として耳に入ってくる感覚となる。

これはおそらく何度も何度もプレイしてやり込まないと味わえないかもしれない。

 

 

 

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ガチャとコンプ欲とバイトのループ

 

 

先程、バイトはガチャガチャから入手すると書いた。

このガチャももちろん一筋縄ではいかない曲者だ。

 

ガチャにはグレードが用意され、

 

梅   100円

竹   500円

松   1000円

セレブ 5000円

 

という価格設定となっている。セレブは名に違わぬ高級ガチャなのだ。

 

それぞれ中身が決まっており、梅さえ回していればいつかはコンプなんと甘い話は地獄にはない。

ボールペン工場で言えば、単価3円なのでセレブを一度回すために1600本以上生産しなくてはならない。

ゲーム内の通貨と言えど、回すときの緊張感は計り知れない大きさとなる。

なんせ必死に働いた「リアルでの時間」という貴重な物がかかっているのだ。

 

 

そしてバイト以外に出てくる「ハズレ」と呼ばれるもの。

これが途方もない数存在している。

こちらももちろん特定の価格のガチャでしか手に入らない物もあり、それらが数百種類ある。

一つ一つにクスッと笑えるようなコンテクストが付いており、ハズレリストを眺めるだけでも数時間は溶けてしまうほどのクオリティだ。

 

さて、ガチャといったらコンプリート。

これは河合塾でも教えられる公式だ。

 

40種のバイト、数百種類ものハズレ、被りあり。

 

これらをコンプしようと思うと途方もない時間が掛かる。

だがその労力は、個々のバイトの面白さで帳消しになる。

 

そう、このゲームはバイトを楽しみガチャに一喜一憂するという巨大なループ物なのだ。

100円で気軽に回して新しいバイトが出たときと、5000円を投じて祈ったのにもかかわらず被りだったときの喪失感。

感情の振れ幅が大きいことは想像に難くないだろう。

 

無駄に張り詰めた空気でセレブガチャの前で呆然とする経験をした人が居たらきっと筆者はあなたと旨い酒が飲めるだろう。

ソシャゲのようにリアルマネーを投じているわけではないのにも関わらず、だ。

 

 

 

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抜け出せない無間地獄へ

 

 

このゲームは、あらゆる所にこだわりとパロディがある。

元祖FPSとも言われる某ゲームにそっくりの画面配置のバイトがあったり。

頭にリンゴをのせるどこかで聞いたようなバイトのBGMがそのままだったり。

 

バイトを選ぶメニュー画面では、遠くからムチで打つ音と悲鳴が聞こえてくる。

地獄なのだから日常茶飯事なのだろう。

同じくバイトをしているらしい若者からメールが来たり、迷惑メールをうっかり開いてしまって所持金を減らされたり。

そこはまさしく地獄でありながら確立された日常なのだ。

 

バイトという形でミニゲームをする、というメタ構造だから地獄の世界観が構築されていればミニゲーム単体の世界観はどこまでも暴走することが出来る。

ゲーム内におけるリアルとゲーム(バイト)の区分がされたことにより、没入感が増しているのは特筆すべきゲームデザインだ。

よく見るとバイト後に報酬と共に渡される領収書には、必ず依頼主の団体名と住所が記載されている。

きちんとフリーランスにも一枚一枚発行してくれるありがたさ、無駄なリアリティである。

 

こういったジャンルは、クソゲーとはいわない。

愛すべきバカゲーだと筆者は思っている。

 

 

違和感ない世界で日常を送りながら、ただただ不毛なバイトをしてガチャを回し喜び落ち込む。

このゲームが地獄たるゆえんは、気付かないうちに没頭してしまうその中毒性だ。

 

休日の朝に起動してしまったら最後、日が暮れるのにも気付けないだろう。

 

筆者の中学時代は、このゲームに大半の時間を費やした。

周囲が色香にときめく中、筆者はボールペンを量産していた。

周囲が勉学に励む中、筆者は仏を斬りまくっていた。

 

一切の後悔はない、と言えば嘘になる。

だが、それだけの価値がある面白さだったのだ。

今でも覚えている。

眠れない夜にボールペンを無心で6000本量産したあの日。

少し熱くて寝苦しくて、ふとPSPに手を伸ばした。たぶん23時ぐらいだ。

 

単調な作業なら眠くなるだろうと始めた。

ふと時計を見たら3時だったんだ。

 

ボールペン工場の画面には、中国語で張り紙がされた工場が移る。

この頃は人件費も格安だった中国なのだろう。

地獄だけど。

耳を澄ませばそれっぽい言語で私語をするおばちゃんの声が聞こえる。

こちらは黙々とやっているのだ、集中しろ。

 

その日は全く眠れませんでした。

そんなことを、今でも覚えているのが不思議だ。

バイトヘルは僕の日常の一部だったのだろう。

 

 

 

今PSPを現役で使用している人は多くないかもしれない。

入手やプレイは困難だろうが、興味の湧いた方は一度触れて欲しい。

 

日常と非日常を往復するゲーム内の動きはどこか新鮮で、抜け出せない無間地獄だ。

 

 

 

 

 

 

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