配信者のしんじさんがプレイしたことで、一気に日本国内でブームを巻き起こした、バックにものを詰めて戦うゲーム。それが「Backpack Battles」です。
戦闘時には一切操作ができず、バッグに詰めた物たちの機能だけで戦うという変則的なシミュレーションゲーム、とでも表現すれば良いでしょうか。このゲームがまあ面白いんです。
で、その面白さは「計画を立てること」「整理整頓がもたらす快感」に有るんじゃないかと個人的に思っております。なのでそこにフォーカスしたようなレビューが書けたら良いなあと思いキーボードを叩いています。
もう一つこのゲームを語る上で欠かせないのが「シナジー(相乗効果)」なのですが、ここについては敬愛するゲームレビューの第一人者J1n1さんが書いてますので是非こちらをお読みくださいませ。
シナジー論 ついハマってしまうゲームの作り方(有料note)
Backpack Battlesとは
凄く簡単に言えば、
- ショップでアイテムを買ってバッグにしまう
- 戦闘へ挑む、このとき戦闘は全自動でバッグ内のアイテムが機能して行われる
- 戦闘の結果に応じて得たお金を元にショップへGO
- 以下、ループ
というもの。買って戦って買って戦って・・・というシンプルなフェーズ。
買い物、バッグ内の整理整頓。この2つだけがプレイヤーの取れる行動となります。だがこれがもう時間を無限に溶かせるぐらい面白い。ランクマッチに手を出した日にゃもう休日が一瞬で無くなるレベル。
アイテムにはそれぞれ効果が設定されている。
戦闘開始時にバフを与えるとか。
5秒に1回スタミナを2消費して殴るとか。
7秒ごとに3体力を回復するとか。
なので基本的には、買いながら戦闘のシミュレーションをすることになります。
こんな感じでショップからスタート。
バッグの配置もいじれます。
そして右側の棚から買い物をして、バッグの中へ配置。
このとき、星マークが表示されるアイテムには「シナジー」があります。星マークが付くと周りの武器の能力が強化されたり、逆に星マークの数だけそのアイテム自身が強化されたりですね。
例えば下の画像では、「Whetstone」というアイテムは戦闘開始時に武器を対象としてダメージ1増加させる、という効果があるので効果を無駄なく使うために、星の位置に武器が来るよう整理整頓。
これで剣二つに強化が入りました。ですが武器はスタミナを消費して攻撃するものが多いため、武器ばっかり揃えてしまうとスタミナ切れで攻撃出来ない、なんて本末転倒なことになるのでバランスを考えなくてはいけないわけです。
そして戦闘時は以下の写真の通り。
出来ることはただ一つ、自分の買いそろえたアイテムがどう機能するか見守ることだけ。
このゲームにはランクマッチもあるのですが、他プレイヤーのプレイ履歴から対戦相手を用意するためマッチングに困ると言うことはかなり少ないです、また買い物に好きなだけ時間をかけられるのでじっくり考えを詰められる、急がなくて良いのもこのゲームの良いところですね。
またショップは戦闘が終わる毎に立ち寄るのですが、品揃えは毎回変わります。けど予約したい商品はこうやって指定することで次回も確実に陳列されます、今は買えないけど欲しいものは取り置きしてもらいましょう。
整理整頓の醍醐味で分かりやすいのはフライパン。
これは武器なのですが、周辺の星マークの位置に食べ物があればあるだけダメージが上がる、という武器です。だからどうすればフライパンの周りに食べ物を敷き詰めることが出来るかを一生懸命考えるわけですね。
そうやって欲しいアイテムを買い集めていくとギチギチにバッグが詰まるので、そこから先が腕の見せ所。
更に、このゲームにはアイテムの進化、という概念があります。
下の画像のように、アイテム同士が惹かれ合うエフェクトが出たら隣接させてみましょう。個数を満たしていれば次ターンで進化します。進化も考えながら次の戦闘も考えながら、アイテム同士の配置による相乗効果も考えなくちゃいけない。
このように、多くの要素がありながらそれを買い物と整理整頓だけでなんとか実現していく、それがこのゲームの全てでありそこに面白さが詰まっているのです。
このゲームの9割は「計画立て」にある
と、ここまでプレイの中身をざっくり紹介しました。
読んでいただいて分かったかと思うんですが、このゲームをプレイする際に時間を使うのはほぼ計画立てです。
どうすればよりアイテムのシナジーを得られるだろうか、でも防御力もヒールも欲しい、そうするとバッグの容量を買い足したいけどそうするとアイテムを買うお金がない・・・
配置にしても、全てのシナジーを完璧に満たす配置なんて存在しない上に毎プレイ、毎戦闘ごとにショップの品揃えはランダムなわけで、再現性も高いわけではない。
100点満点の買い物が絶対に出来ない中で、何をどこまで諦めて妥協するか、それを決断しつつアイテムが戦闘時にどう踊るのかをひたすら脳内でシミュレーションし、計画を修正しては次の戦闘と買い物へ臨む。そんなゲームがなぜここまでブームになったほど面白いのか。
それは、人間の本能とも言える心理と密接な関係がある、と筆者は考えています。
人間の脳は「計画」だけで満足感を得られる
これを読んでくださっている人の中に、
- 「夏休みの宿題、計画立てたけど上手く行かなかった」
- 「貯金計画を立てたときはやる気満々、でも続かない」
という経験をしたことがある人、多分いると思います。そしてなにより筆者自身がこんな展開にしょっちゅう陥っています。これは心理学的によく聞く話だそうで、
「人間の脳は想像と現実の区別が付かない」
↓
「計画を思い描いただけで達成感、満足感を得てしまう」
という働きがあるそうな。だから計画通りに進めていくときの面倒くささ、しんどさ、労力に耐えきれず頓挫するというのは結構理にかなったことらしいんですよね。
確かに言われてみれば計画って立ててるときにもう楽しくなっちゃっている、もっと言えば労力の先にあるはずの達成感を先取りしてしまうわけです。ただ計画立てというのはそれぐらい楽しいわけで。
振り返ってこのゲームを考えると、計画を立てるのはプレイヤー、実行するのはオート。つまり計画立ての楽しい部分を一生味わえちゃうのがこのゲームの中毒性なんですよね。
もちろん労力だってある、労力を惜しんだら勝てない
とはいえそんなに都合の良いゲームではなく、自分の理想とする戦いをするには大変な労力が要ります。
途中までコツコツ形成してきた荷物を一回全部バラして組み直した方が、絶対にいいビルドになるのにそれをサボったり。
スタミナが足りないという現実を見ずにロマンビルドばっかりしてみたり。
もちろん勝つことが正義ではなく楽しむことがゲーム本来の目的なのですが、こと勝利を目指すとなると楽をしていては勝てない、というのは絶妙なバランスを保っているなあと思える部分でした。
特にランクマッチはランクが上がると、明らかに相手の練度が上がってきます。シナジーをしっかり利用した合理的なビルドの相手ばかりになってくるのでやりがいもあるし、参考になる配置も沢山観れるはず。
ゲームと「整理整頓の快感」
ゲーム内に「整理整頓」という概念は時折出現します。
一番有名なタイトルで言えば、バイオハザード4でしょうか。それ以前のシリーズでは持ち物枠が限定されている中で何を持つか取捨選択し、アイテムボックスや床に置くなどでやりくりする、というゲーム性がありました。それを4ではアタッシュケースの整理整頓と大きく変更。
アタッシュケースでその人の人となりが分かります。皆さんのアタッシュケースはどんな感じですか?私はこんな感じ。#REBHFun#バイオハザード4 pic.twitter.com/Ud7fSI523T
— 【公式】バイオハザード / RESIDENT EVIL PORTAL Official (@REBHPortal) October 27, 2021
これほど顕著ではなくても、Minecraftの収納に凝ってみたり、Factorioのインベントリをコツコツ整理したり、モンハンでクエストに何を持って行くか吟味したり、なにかしら持ち物の整理に向き合ったことがある人は少なくないはず。
あと絶対に言及しなきゃいけないのがEscape From Tarkov。
拾ってきたアイテムをどう保管しておくか、その瞬間が一番楽しいとまで言われるインベントリ整理は間違いなく一大要素と言えるレベルだと思います。ひたすらバッグの中にバッグをマトリョーシカ方式でみんな収納してるよね?
というように、案外整理整頓とゲームというのは相性が良いんですよね。
現実の整理整頓と違って、ひたすらドラッグ&ドロップで作業できるので疲れない、けど整理整頓の快感を得ることが出来る。だからゲーム内で持ち物の整理が楽しいって人は少なくなくて。
ただあくまでも基本的に整理整頓というのは「手段」に過ぎないわけです。より多くのアイテムを保管・持ち運びするためだったり、あるいは全然メリットがないけど自己満足として楽しんでいたり。
そこを切り取りゲームの主題としたのがこのBackpack Battlesと言えます。その切り取りがある種の発明だと思うのです。
本能的な二つの快感を味わおう
「計画を立てる快感」「整理整頓がハマった快感」
この二つを味わいながら思考作業を楽しめる、それがBackpack Battlesの凄いところ。
今までは副次的な作業に過ぎなかったこの2つに焦点を当て、そこにプレイの全てを絞った結果この傑作が誕生したのでは無いかと思います。ブームは過ぎ去ったかもしれないけど、面白さは不変だから今からでもやったことない人はやってみよう。
気がつけば購入フェーズで頭を抱えながら10分ぐらい迷ってると思います。そしてその瞬間こそ、このゲームで一番味わうべき楽しい部分が凝縮されているのです。
他にも色んなゲームのレビューを書いてます、もし良かったらこちらからどうぞ。
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